5月22日の読みドクターの記事です。
医師養成数のあり方について議論している厚生労働省の検討会の分科会は21日、2020~21年度の医学部定員について、おおむね現状維持とする中間取りまとめ案を大筋で了承した。月内の検討会で最終的に取りまとめる。
厚労省の推計では、現状の定員のままで週60時間労働と仮定した場合、2028年頃には医師数が約35万人となって需要を満たし、40年には3.5万人過剰になるとしている。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180522-OYTET50008/?catname=news-kaisetsu_newsより
こちらは、5月21日に開催された医師需給分科会の「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第3次中間取りまとめ(案)」を踏まえた記事です。
取りまとめ(案)を見る限り、「一応、現状維持だけど今後は定員減らしたいな~」という意図が垣間見えます。
本日は、検討会の内容を少し詳しくご紹介します。
おさらい
今回は第3次中間取りまとめです。
第1時中間取りまとめ(2016年6月)では、2008・2009年度に「新医師確保総合対策」及び「緊急医師確保対策」に基づきスタートされた医学部定員の暫定増(一時的な増加)の当面延長が決定されました。
第3次中間とりまとめでは、新たな調査を行ない、第1次中間取りまとめでは延長することにした医学部定員の暫定増をどうするかが議論されています。
検討の前提について
(1)医師数
2016年の医師数は 319,480 人。
医学部定員は、2017年度から2019年度まで「新成長戦略」に基づき、都道府県からの追加増員の要望を精査し実行。医学部定員の暫定増については、2018年度は1,010 人。医学部定員としては過去最大級の 9,419 人に達した。
(2)医師偏在対策
現在議論中の「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」が成立した場合には、各都道府県において「医師少数区域(仮称)」等が設定される。
医療法及び医師法の一部を改正する法律案について詳しくはこちらの記事へ
(3)医師の働き方改革
医師の時間外労働規制等については、2019年3月に最終的な結論を得る予定。
その結果を踏まえ、「医師の働き方改革に関する検討会」において、引き続き検討が進められる。
(1)から(3)を踏まえると医師数は着実に増加し、今後も増加することが見込まれる予定。
だが、医師需給に大きな影響を及ぼす医師偏在や医師の働き方改革の政策決定は、現時点では結論が得られていない。
また、これらの今後の実態把握にも時間を要する状況。
そのため、2020年度以降の医師養成数についての方針は、2020年度・2021年度における暫定的な方針として、2022年度以降の医師養成数については、医師の働き方改革に関する検討会の結論等を踏まえ、再度、医師の需給推計を行った上で検討を行うこととする。
ということで、今回も暫定的な対応が決定されました。
「医学部受験生への配慮の観点から、平成 30 年5月末までに結論を得る必要があるので、一旦の結論を出したよ~」というところでしょうか。
将来の見通しは?
医師の供給推計については、2016年では 31.5 万人であるものが、2025年には 34.2 万人に、2040 年には 37.1 万人まで増加すると推計されました。
(医師の労働時間を3パターン過程し、その結果を踏まえ医学部定員や国試合格率や性年齢別就業データなどを用いて推計を算出。詳しい算出方法は取りまとめ案よりご確認ください)
取りまとめの中では、「今後、医師偏在対策、医師の労働時間の短縮に向けた取組等が進むことを前提とし、現状において、既に過去最大級の医学部定員の増員を行っていることを踏まえると、全国で更に医学部定員を増員する必要はない。」と記されています。
今後は、医師偏在対策及び労働時間の短縮に向けた取組等を進めつつ医学部定員は現状を概ね維持し、都道府県や大学からの要望に関しては、2019年度の医学部定員を超えない範囲で精査していく見通しです。
また、2022 年度以降の医師養成数の議論は、将来的な医学部定員の減員に向けた議論としていく必要があるものの、「マクロの医師需給が均衡することは、必ずしも、地域や診療科といったミクロの領域でも需給が均衡することを意味しない」とも記されていました。
全国レベルのマクロの医師需給推計だけでなく、ミクロの領域における医師偏在対策や、都道府県毎の医師需給、診療科ごとの医師の必要数、長時間労働を行う医師の人数・割合の変化等についても適切に勘案した上で、医師を取り巻く環境がこれまでよりも短いスパンで変化していくことも踏まえ、定期的に検討をしていく必要がある。との考えです。
なお、医学部の臨時定員増分を削減する場合、地域間で医師偏在があるケースには、偏在に応じた程度まで地域枠のニーズは残ることになることも書かれていました。
2022年度以降の医師養成数については、医師の働き方改革や労働実態、医師偏在対策や医師偏在の状況等を勘案し、定期的に医師需給推計を行ったうえで、将来的な医学部定員の減員に向けて、医師養成数の方針等について見直していくべきである。と締めくくられていました。
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