以前、医師免許取り消しについての記事をご紹介しましたが、「保険医取消し」となった先生も、医師紹介会社へ問合せをされることがあります。
保険医取消しは勤務医の先生はあまりピンとこないかもしれませんが、開業医の先生にとっては、ひょっとしたら他人事ではない話かもしれません。
紹介会社へ問合せがあった保険医の取消しを受けた先生は、私が知る限りは全て開業医の先生でした。
保険医の取消しは、厚生局による指導・監査の結果を持って判断されます。
指導・監査についての詳細をお知りになりたい方は、こちらをクリックしてください。
(平成 28 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況より抜粋)
また、NTTデータセキスイシステムズのコラムでは詳しい事例が紹介されています。
保険診療における処分については、保険医を対象にしたものと、保険医療機関を対象にしたものがあります。
今回は、保険医の処分を中心にご紹介します。
最新の保険医・保険医療機関の指導・監査状況は?
最新の情報は2017年12月発表のデータになります。
平成 28 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況/厚生労働省
上記の資料によると、医科の指定取消しや登録取消し件数は次の通りです。
*取消相当:取消処分が決定する前に自ら保険指定を辞退
これは、歯科・薬局も含む数字になりますが、保険医療機関の指定取り消しに関わるきっかけは、保険者、医療機関従事者等、医療費通知に基づく被保険者等が18件、その他が9件でした。
ちなみに、返還金額は約89億です。内訳は、指導による返還分が約41億、適時調査による返還分が約43億、監査による返還分が約4億でした。
保険医の処分理由は?
続いて、資料から処分理由を見ていくと架空請求、付増請求、振替請求、二重請求などが多いです。
これらの請求は不正請求にあたります。
処罰対象は、不正請求の他にも、不当請求もありますが、平成28年度の処分対象者は不正請求が殆どです。
両者の違いについては下記をご覧ください。(保険診療の理解のため/厚労省より抜粋より抜粋)
具体的な事例も今回の資料では記載されています。処分の基準の資料と合わせてご覧ください。
保険医取消し処分を受けると?
処分によって失うのは保険医の資格だけではありません。経済的な処罰も受けます。
不正が認められた場合、原則として5年間分の不正請求額に40%の加算金が加えられた金額を支払う必要があります。
また、当たり前ですが保険医療機関では働けなくなります。
医師として働ける場所としては自由診療の施設のみです。
健診か美容、社医やMRなどの一般企業といったところでしょうか。
自由診療のみですが、処分後も医師として働けるという点は、医師免許取消と異なる部分です。
ただし、一般企業系での勤務は行政処分が理由で落とされる可能性が高いです。
美容クリニックも医師名をHPで大々的に公表し集患を図るので、不正請求の過去がある先生は嫌煙されがちです。
同じ美容でも、男性美容のほうが可能性があります。
老健は介護保険なので働けるかと思いきや、私が相談した老健はどこもNGでした。
(すみません、NGの理由は失念しました)
あと、いずれの自由診療の施設でも、不正請求の件については聞かれると思います。
直接、先生に聞かずとも紹介会社経由の場合はコンサルタントに聞くと思います。
ですので、不正請求についての説明は避けて通れません。
(むしろ、理由を聞かない施設や紹介会社は危ないです。)
保険医取消処分を受けると、指名が公表されるので、遅かれ早かれ相手側は分かってしまうことです。ネットで知られる前に、ご自身から伝えましょう。
さいごに
取消処分となった場合、原則として5年間は保険医の再指定・再登録はできません。
処分が納得できない場合には、裁判を起こして処分停止を訴えるという手もありますが、多大な時間と労力がか掛かります。
(ネットで取消処分に関する裁判を調べると、けっこう出てきます)
どうぞ十分にご注意ください。
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