以前、医師紹介会社にまつわる噂として、「医師と紹介会社が共謀して繰り返し転職を斡旋」について言及しました。以前の記事でも申し上げたように、こちらについては私は実例を聞いたことがありません。
しかし、今回の記事である「医師の中抜き」については、けっこうな頻度で被害を聞きます。
医師の中抜きとは、医師紹介会社から医師の紹介を受けたにも関わらず、紹介手数料を一部もしくは全額支払わない行為です。
私が担当した案件ではありませんでしたが、他の紹介会社や他支店、同僚では実際に被害を受けたコンサルタントもいました。
もっとひどい例だと、そもそも紹介料を払わないという法人も意外と存在します。
今回はけっこう辛辣な事も好き勝手に申し上げています。
医師の中抜きを行うような法人は業界から退場してほしいという気持ちのもとに(もちろん、医師と斡旋して繰り返し転職を斡旋しているような紹介会社がいれば、その会社は退場どころか倒産してほしいです)作成しましたので、予めご了承ください。
Contents
医師の中抜きパターン
よくあるパターンは下記の内容です。
パターンとして申し上げますが決して真似はしないでください!
(万が一、真似されても下記のパターン例なら、ある程度経験があるコンサルタントは見破ります。新人のコンサルでもメンターとしてベテランがついてます)
○勤務開始直後に偽装退職させる
→医師紹介会社の返還規定を悪用した行為です。一括支払いの場合、ほとんどの会社で早期退職に対する返還規定を設けています。医師へお願いし紹介会社へ偽の退職報告をさせます。
○面接後に紹介会社を通さず直接医師へコンタクトをとる
→こういった懸念がある為、紹介会社によっては面接時の履歴書にも医師の連絡先を記入していない場合があります。その他、基本契約書の面接前の締結を必須としていることも。
また、医師は一般の方と異なり、お名前さえわかれば勤務先や繋がりのある方を見つけやすい特殊な職種です。医師へ直接コンタクトを取り、紹介会社へは勤務辞退の申し出をするよう根回しをする施設もありました。
○面接前に繋がりのある医師と判明した場合、紹介会社を通さずコンタクトをとる
→上記と少し似ていますが若干異なります。
医師は狭い世界のため、以前にスポットでその医療機関にて勤務経験があったり、グループ病院だと同じ法人の別病院で非常勤中なんてこともあります。
そういった場合、コンサルタントは面接より早いタイミングで医療機関へ医師名を伝えるケースが多いです。
それは、働きぶりや評判を把握している場合、採用可否は面接ではなくその情報に左右される可能性が高いので、お互いの時間効率を考えてのことです。また医療機関側が断りを入れる場合、その医療機関と医師の関係悪化を防ぐための紹介会社側の配慮でもあります。
それを悪用し、医師へ直接コンタクトを取ります。
これは、医療機関側としたら「うちとすでに繋がりのある先生だからいいじゃない!」と思われるかもしれませんが、とんでもないです。
もし、もともと入職意向があれば、先生方も直接お申し出になっているはずです。
わざわざ医師紹介会社を通したのはなぜでしょうか?
それは、「元々は候補として考えてなかった」や「直接やり取りするのが不安」などの理由が存在するからです。
医師紹介会社を通して入職の希望が出た場合は、それはもう紹介です。それを避けたければ普段から非常勤の先生とも積極的に交流するなど事前の工夫をされてください。
○入職時は給与を安くor日数を少なく契約し勤務後に増やす
→支払う紹介手数料を少しでも抑えたいという行為です。事前に医師と相談のうえ実行されます。起こりやすいのは定年後の先生や、子育て中の先生で複数日勤務する非常勤です。
○スポットに来ている医師と直接やりとりを始める
→これはちょっとグレーラインです。ただし、紹介会社との契約書に勤務日数が増えた場合は別途手数料を支払うという文言があれば支払い義務は生じます。
その他にもあるかもしれませんが、以上が私が思いついたケースです。
医師の中抜きは、線引きが難しい例もあります。
個人的には、定期非常勤やスポットでご紹介していた先生が、その医療機関を気に入って労働時間を増やしたいという場合は、先生がそのように思えたことは医療機関側が働きやすい環境を調整した努力でもあるので目をつぶりたいと考えています。
ですが、ご紹介した医師と関係性もきちんと築かず、お金のためだけに医師へ直接コンタクトを取る行為は絶対に許せません。
では、そもそも「なぜ医師の中抜きは起こるのか?」ということについて次の項目で考えてみます。
医師の中抜き何故おきる?
今まで中抜きをしてきたor中抜きの噂のある医療機関の共通点は、
・ビジネス意識が希薄
・最初から最後まで態度が横暴
・ワンマン経営者
です。
私は、けっこう小規模な法人が多い印象です。
話はそれますが(お時間ある時はご覧ください)、私が担当したグルーブ病院の案件で、紹介医師(A先生)と院長先生がお知り合いの案件がありました。しかもA先生は、こちらがその事実を把握する前に院長へ「〇〇会社から応募しています。よろしくお願いします」と挨拶に行かれたそうです。
その話を聞いた時は、もうビックリです。
ですが、その医療機関の採用担当の方からは、そのまま紹介として話を進めてくださいと承りました。
私が理由を伺うと「うちの病院は幾つも施設を持っています。もし自院で紹介会社とこじれる事があれば、他の施設にも迷惑を掛けかねません。そもそも最初はそちらから連絡をいただいていたので、そのままで結構です」と仰っていただきました。そのように真摯にお付き合いいただけることに、とても有り難く感じた出来事の1つです。
グループ病院については中抜きリスクが少ないと思っていましたが、過去には病院を幾つも持っているような医療機関でも中抜きをする法人がありました。それは本当に驚きと共にその法人の先行きを本気で案じました。(その経営者じゃなく勤務中の方々をです)
医師は他の職種と異なり「医局」が存在します。
また、知人や先輩の紹介で就職する医師も民間に比べれば多いです。
そういった独特の事情があるため、中抜きを行う医療機関は、「紹介会社を利用する医師は何か問題があるのでは」と、どこか見下しているんじゃないか、そういった会社や医師にお金を払いたくないという意識があるんじゃないかと私には思えてなりません。
(接待費や医局への献金以外で医師の採用にお金がかかるという意識も低いと思います)
ですが、それは大きな誤解です。新医師臨床研修制度が始まってから、もうすぐ15年。医師紹介会社の数も増えています。それだけ医師からの需要があるからです。
一度も医局に属さず、キャリアを磨いていらっしゃった医師も多くいらっしゃいます。
医局に所属したまま非常勤先を探される先生や、医局を出て勤務先を探される先生のご依頼もとっても多いです。
上記でも申し上げましたがビジネスということを分かっていない医療機関の方もいまだにいらっしゃいます。医師紹介会社も自社で費用を掛けて医師を紹介しています。(詳しくはこちら)
「人を紹介するだけで何もせずに儲けているんでしょ?」というお考えは捨ててください。
そして医師紹介会社側も襟を正す必要があります。
「ただ医師を斡旋しているだけ」と思われてしまう雑な仕事や対応の悪さは、医師紹介会社の存在意義を薄めます。
契約書の締結忘れや、進捗中に全く記録を残していないなど論外です。
医師との積極的なコミュニケーションも医師の中抜きリスクを下げる1つの方法です。
医師紹介会社側の対応によって、完全に医師の中抜きが防げる訳ではありませんし、その対応ができない場合がある事も十分に承知しておりますが、最善を尽くし続けることは重要です。
中抜きから裁判へ発展することも
弁護士から書状が届いたことありますか?
私は1度だけあります。あれって自分の名前が入って届くんですよ。
私の場合は、全くの事実無根ですし細かいやりとりも全て書面で残していましたので裁判へ発展しても負けることは決してない内容でしたし、実際に裁判は起こりませんでした。が、それでも精神的ショックは大きかったです。(裁判起こされてもへっちゃらな人は別です)
もし、医師紹介会社側から裁判を起こされた場合、採用担当者の名前入りで書面が送られてくることがありえます。裁判になった時には出廷し証言すること可能性も。
紹介会社と医療機関の裁判、これ結構大変です。
そもそも裁判所は医師の就職事情に精通していません。業界の不文律も通用しません。
そして、証言台に立つストレスたるや・・・
かたや、紹介会社側は勝てると踏んで裁判を起こしています。それだけの材料を揃えています。
(先生とのメールや連絡履歴は、普通の会社であれば常に残しています)
私が聞いた裁判例では、紹介会社側は材料に沿って客観的に証言できていましたが、医療機関側は確たる材料もなく主観的な話に終始していたそうです。
(紹介会社は仕事なので細かく記録を残しながら医療機関とコンタクトとりますが、医療機関側は他の業務と兼任されている場合もあり、なかなか難しいですよね)
具体的に申し上げると、紹介会社側は材料をもとに「メールでは・・・」、「○月△日のやり取りでは・・・」と証言しているのに対し、医療期間側の担当者は「無理やりだった」「横暴な態度だった」と証拠ではなく相手を陥れる言葉を言うしかないという状況だったそうです。
そして「記憶にない」「覚えてない」「わかりません」のオンパレードに、医師招聘の経験年数や紹介を受けた件数の偽証(裁判所は騙せても同じ業界の人間から見ればすぐに嘘だとわかります)、あまりにも酷い内容で苦笑いが出るほどだったと聞き及びました。
ただ、気の毒なことに、これを証言していたのは法人側の責任者ではなく採用担当者だったんです。
その他には、医療機関側が用意した証人も、傍聴人もいなかったそうです。
法人の指示通りに動いていただけかもと考えると心の底から気の毒です。
恐らく、医師紹介会社の手数料を抑えただけで特別ボーナスが法人から支給されたり、訴えられるリスクを上回る恩恵を受けることはないと思います。
採用担当者の方は、ご自身の為にも医師の中抜きに加担するようなことは無いようにしていただきたいです。
医療機関側の不利益
医師の中抜きを止めていただきたいというのは、「お金ちゃんと払ってよ」という意味合いだけではありません。中抜きを行うことによってかえって損をしてしまうケースがあるのです。
○医師を紹介してもらえなくなる
→医師の中抜きをする医療機関は、コンサルタントの中で噂が広がります。
(ニセ医師事件なんかも報道で会社名出てなくても、どこの紹介会社か仲間内で回ってきます)
人材紹介業は(残念なことでもありますが)転職者が多い職種です。
例え中抜きをしたことが1度だけでも、コンサルタントが転職先で「ここは止めたほうがいい」と警告した場合、その会社からも警戒されます。
一度、紹介会社から警戒されてしまえば、医師の紹介は減るor希望する医師はなかなか紹介されないなんてことも。
ちなみに、医師だけではなく、看護師など他の職種も取り扱っている紹介会社の場合、まとめて紹介がもらいにくい状況になる可能性だってあります。
そして、噂が消える時期は誰にも分かりません・・・
○医師からも敬遠される
→私がとある医療機関を紹介した際に医師から「この医療機関は中抜きをしようとするような施設なんで嫌です」と言われたことがあります。
その医師は、同時期に他社から面接を受けた際、医療機関側から中抜きを持ちかけられたために入職自体を断った経緯があったそうです。
費用を抑えようとした結果、医師からは辞退され中抜きの事実も広がるという最悪のパターンです。
○契約書が厳しくなる
→これは、問題を起こした医療機関ではなく大多数の至極真っ当な医療機関が不利益を被る例です。
10年以上前から医師紹介会社を利用されている医療機関の方であれば、特にわかりやすいと思いますが、以前と比較し紹介会社との契約書がどんどん細かくなっていると感じませんか?
実際に私が勤務している時も契約書は何度か変わりました。
契約書に項目が追加される、文言が細かくなる、何種類も契約書を交わさなければいけなくなった、そういった状況になった理由として考えられることは、医師紹介会社が「違反行為を受けた」「被害を受けた」からです。
紹介会社は、二度と同じ違反行為や被害を受けずに済むように契約書を変更・追加するのです。
紹介会社側だって面倒なので本当は変更や追加はしたくありません。
そして、至極真っ当な取引を行なってくださっている大多数の医療機関の方の手間も増やしてしまいます。
1つの医療機関のせいで他の医療機関へ迷惑が掛かってしまうのです。
医師の中抜きは費用面でのメリットもありますが、デメリットも山ほどあります。
ご自身の為にも、医療機関の為にも、(ご理解いただけるのであれば業界全体の為にも)
絶対にお止めください!!
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